岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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親孝行三姉妹が繰り広げる本音の姦しドラマ

2024年08月22日

お母さんが一緒

©2024松竹ブロードキャスティング

【出演】江口のりこ、内田慈、古川琴音、青山フォール勝ち(ネルソンズ)
【監督・脚色】橋口亮輔

話づくりを楽しむ 役者から芝居を引き出す演出力

女3人寄れば姦しい

"姦" この漢字は何となく見た目からして悍ましい。女性はおしゃべりで、3人集まるとやかましいということから、女が3つ重なる漢字ができたらしいのだが、ネガティブなイメージがするのは、この漢字のかたちからなのかも知れない。

上方漫才では "かしまし娘" という三姉妹コンビがいた。三味線にギターを携えた漫才は、"音曲漫才" という分類があって、昔は数多く見られた。そもそも漫才は古典芸能の三河万歳や尾張万歳をもとにしているから、小鼓や太鼓、三味線、拍子木を用いるのは本来の形の継承でもある。

記憶によれば、かしまし娘は、三姉妹が激しく喋くり合う、所謂、"しゃべくり漫才" だった。激しい言葉のぶつかり合いは、下手をすれば喧嘩だが、関西弁がこれを緩和する…というのも西日本の幻想らしく、一般的には、言葉の持つ棘は時には凶器になる。

『お母さんが一緒』は三姉妹の話。

長女・弥生は、美人姉妹と言われる妹たちにコンプレックスを抱いている。

次女・愛美は、優等生の姉を疎ましく思い、自分が能力をうまく発揮できなかったのは、姉のせいだと恨みの闇を抱えている。

三女・清美は、そんな姉ふたりを見て、鼻先で笑う冷静な観察眼を持つひねくれ者。

そんな三姉妹が、親孝行をするため、母親を温泉旅行に連れ出す。

原作は脚本(共同)を担当しているペヤンヌマキが主宰する演劇集団 "ブス会" が、2015年に初演した同名戯曲で、温泉旅館を舞台にした概ねシュチュエーションコメディの形態でホームドラマ。

監督は『恋人たち』以来、9年ぶりの監督作品となる橋口亮輔で、舞台版を共同で脚色し制作したテレビドラマを劇場版として再編集。演劇的な誇張を会話劇の名手らしいコントロールで映画的に仕上げている。

三姉妹を江口のりこ、内田慈、古川琴音という旬な女優が演じ、見事なアンサンブルを見せる。

不在の母への愚痴が、共通の思いに昇華するオチも、分かっちゃいるけど面白い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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