杜撰な脚本でツッコミどころ満載の物語

私の母は要介護認定４となり、今年の春から特養に入居している。1か月に1度は面会しているが、少しずつ認知症は進行しているようだ。その前の約2年間は自宅介護であったが、しもの世話など負担は大きく、正直いってホッとした。介護はプロに任せた方が、何かと幸せだと思う。

本作の主人公・絵本作家の千紗子（杏）の父・孝蔵（奥田瑛二）は認知症が進んでいる。千紗子とは長らく絶縁状態であったが、、地元に住む公務員で友人の久江（佐津川愛美）から連絡があり、要介護認定がおりて施設に入るまでの間、渋々同居することになる。

どうやって折り合いを付けていくのだろうと関心を持って映画を見始めたが、予想だにしなかった展開が待っていた。杜撰な脚本でツッコミどころ満載の物語は、ご都合主義のオンパレードで、設定もいいかげん。

認知症に子どもの虐待に過疎化という切実な問題に対して、なんだか捉え方が絵空事にしか見えてこず、自分の面前からだんだんスクリーンが遠ざかっていった。

まずは物語の発端となる公務員の久江の飲酒運転だが、いくら映画とはいえ軽々しすぎる。この時点で久江も同乗者の千紗子も犯罪者である。

そして「タイミングよく」子どもをひいて、「記憶喪失」以外は無傷だったので家へ連れて帰り、亡くなった自分の息子の代わりとして育てることとする。言い訳がましく「虐待の痕跡」をみせて、家に置いておく理由とするが、これ誘拐ですから！

この子どもは、川で「バンジージャンプ」をしていてロープが切れて川で流され行方不明になったということだが、捜索中に親が帰ってしまうという無理矢理な設定で親の非道をみせている。むしろこんな親ほど世間の同情を引く行動に出るだろうに、こんな奴おらへんやろとシラケてくる。

クライマックスの設定は、どうしてこんな結末にしたのかと思うばかりだが、単に私に合わなかっただけで、テーマはいい映画である。