岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品フィリップ B! 美しくも残酷な反ナチス映画 2024年08月06日 フィリップ ©TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022 【出演】エリック・クルム・ジュニア、ヴィクトル・ムトゥレ、カロリーネ・ハルティヒ、ゾーイ・シュトラウプ、サンドラ・ドルジマルスカ 【監督】ミハウ・クフィェチンスキ 隠れるだけにとどまらない怒りと復讐 何故、原作小説は発禁となったのか? 1941年、ポーランド・ラルシャワのユダヤ人が住むゲットー。片隅に追いやられた生活にもささやかな幸せがあったが…突然、その静寂は破られ、フィリップは最愛の恋人サラや家族を殺される。 2年後、フィリップはドイツのフランクフルトにいて、高級ホテルのレストランのウェイターとして働いている。 空白の時間がどんなものであったのか、多くは語られない。フィリップがフランス人と偽っていること、それを同僚の何人かは知っていることがわかる。 戦争とは無縁のような、リゾート地のようなプールサイドで、フィリピンはナンパに励む。同僚とのやり取りから、そこには下心を含んだゲームのような感覚が孕まれているように感じられる。 フィリップがナンパで落とした女性たちは、ナチス将校たちの夫人で、夫を戦地に送り出した後の孤独の隙間に、フィリップはつけ込んでいた。 獲物として捕らえた女性たちの耳元で、侮蔑を込めた呪詛の言葉を囁く…それが彼が画策し実行している復讐だとわかる。 原作はポーランド出身の作家レオポルド・ティルマンドの1961年に発表された小説で、女性たちを蔑む非情で過激な内容が問題となり、発禁の処分を受けている。そして、これがティルマンドの実体験をもとにしていることにも驚く。 軍も利用する高級ホテルだったが、そこは決して安住の場所ではない。猜疑と密告が渦まく中、従業員たちの隠れた身分が暴かれる。 監督、脚本(ミハル・マテキエビチと共同)は、ポーランド出身のミハウ・クフィェチンスキ。90年代からテレビのプロデューサー、演出家として活躍し、映画では、アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』(2016年/日本公開2017年)をプロデュースした人。 復讐のみを拠り所に、嘘で塗り固められた生き方をするフィリップだったが、ひとりのドイツ人女性リザとの出会いが運命を大きく揺るがせる。 新たな切口の美しくも残酷な反ナチス映画である。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月06日 / 幸せのイタリアーノ 嘘からはじまるロマンチックコメディ 2024年09月06日 / 愛に乱暴 真面目に生きてきた女性が壊れる 2024年09月06日 / 愛に乱暴 人間の我慢の限界を描き、本質に迫った映画 more 2023年11月27日 / 鯖江アレックスシネマ(福井県) ものづくりの街にある映画館に溢れる観客の笑顔。 2022年03月23日 / 名演小劇場(愛知県) 最も自由で民主的な文化を創造する名古屋の老舗劇場 2021年05月26日 / 【思い出の映画館】銚子セントラル(千葉県) ドラマ『港町純情シネマ』の舞台となった映画館 more
隠れるだけにとどまらない怒りと復讐
何故、原作小説は発禁となったのか?
1941年、ポーランド・ラルシャワのユダヤ人が住むゲットー。片隅に追いやられた生活にもささやかな幸せがあったが…突然、その静寂は破られ、フィリップは最愛の恋人サラや家族を殺される。
2年後、フィリップはドイツのフランクフルトにいて、高級ホテルのレストランのウェイターとして働いている。
空白の時間がどんなものであったのか、多くは語られない。フィリップがフランス人と偽っていること、それを同僚の何人かは知っていることがわかる。
戦争とは無縁のような、リゾート地のようなプールサイドで、フィリピンはナンパに励む。同僚とのやり取りから、そこには下心を含んだゲームのような感覚が孕まれているように感じられる。
フィリップがナンパで落とした女性たちは、ナチス将校たちの夫人で、夫を戦地に送り出した後の孤独の隙間に、フィリップはつけ込んでいた。
獲物として捕らえた女性たちの耳元で、侮蔑を込めた呪詛の言葉を囁く…それが彼が画策し実行している復讐だとわかる。
原作はポーランド出身の作家レオポルド・ティルマンドの1961年に発表された小説で、女性たちを蔑む非情で過激な内容が問題となり、発禁の処分を受けている。そして、これがティルマンドの実体験をもとにしていることにも驚く。
軍も利用する高級ホテルだったが、そこは決して安住の場所ではない。猜疑と密告が渦まく中、従業員たちの隠れた身分が暴かれる。
監督、脚本(ミハル・マテキエビチと共同)は、ポーランド出身のミハウ・クフィェチンスキ。90年代からテレビのプロデューサー、演出家として活躍し、映画では、アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』(2016年/日本公開2017年)をプロデュースした人。
復讐のみを拠り所に、嘘で塗り固められた生き方をするフィリップだったが、ひとりのドイツ人女性リザとの出会いが運命を大きく揺るがせる。 新たな切口の美しくも残酷な反ナチス映画である。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。